それでは早速、前回の記事に挙げた16種のスローガンをピックアップしていきます。
一つ目に取り上げるのは、アラノンのデイリーリーダーのタイトルにも使われている、“One Day at a Time”。私が持っている書籍の索引を見る限り、その言及数はスローガンの中では最多です。アラノンの書籍は大部分がメンバーの経験から構成されていることを鑑みると、“One Day at a Time” は多くのメンバーにとって一番馴染み深いスローガンの一つであると言えるでしょう。
最近、ロイスのバイオグラフィーから発想したシリーズ記事を書きました。
その本の中に、ビルが「誰でも酒をやめ続けることができる」とニューカマーを説得する時によく使っていたフレーズとして、one day at a time が登場します。
どのアルコホーリクにも、一度か二度は(at a time or another)、少なくとも一日やそこら(one day or more)酒を飲まずにいられた経験がある。必要なのは、今日飲まないでいることであり、明日や昨日のことは考えなくてよい。
ビルたちが交わす合言葉のようなこのフレーズを、ロイスは自身の生き方にも応用するようになり、困難な時にそれが自分を助けてくれたと、後のインタビューで語っています。スローガンもまた、経験から出来たことが分りますね。
「今日飲まない」の積み重ねが、ソブライエティとなる。当時のアルコホーリクたち、そしてロイスを助けたこのスローガンは、現代のアラノンメンバーの間でどのように使われているのか。
書籍やミーティングの中で、「~に “One Day at a Time” で取り組む」「“One Day at a Time” で生きる」といった表現をよく耳にします。おそらくその文脈においては、“One Day at a Time” は「態度/生き方」を示しているものと思われます。また、これを「アルコホリズムの影響を受けて身についた態度や生き方」と対比させて語られることが多いようです。
ここで、How Al-Anon Works の第4章『Understanding Ourselves and Alcoholism(自分自身とアルコホリズムを理解する)』で言及されている「アルコホリズムの影響」を振り返ってみます。
アルコホリズムが周りの人々に与える影響は、強迫観念/とらわれ、不安、怒り、否認、罪の意識として表れます。一つ一つの症状については各記事の中で考察していますが、それらはアルコホーリクと近しい人々(とりわけ家族)において、その態度や生き方を決定するほどに強い支配力を持つようになります。
「~が起こるかもしれない」「~にならないように、~しなければならない」という不安や強迫観念に突き動かされ、物事をどうにかして自分の思い通りにしようとする。一言で言うならば、これがアルコホリズムと共に生きる人々が身に付けるようになる態度と生き方です。
それではこれに対して、「“One Day at a Time” ~」とは、一体どのような態度/生き方を示唆しているのでしょうか。
第9章『アラノンのスローガン』に戻ります。“One Day at a Time” のセクションには、私たちにできる選択は、今日どのように応える(respond)のかということだけである、と書かれています。この respond は、「起こった物事、または自分にされたことに対して行動を起こす」という意味になります。
未知の恐れに振り回されるのではなく、いま目の前にある現実と向き合う。しかしながら、アルコホリズムと隣り合わせの家族に、「どのように対応するか」などという選択肢があるでしょうか。実際はないに等しいと思う。
“Respond, Don’t React” というスローガンがあるけれど、「応答」と「反応」の違いの一つはそれが選択によるか否か。それでも、だからこそのプログラムであり、フェローシップであり、スローガンであります。
次回から、“One Day at a Time” で生きるために役立ちそうな、もう少し具体的なスローガンを取り上げます。
その前にもう一つ。“One Day at a Time” で生きる利点は、途方もなく大きな課題もより小さく、達成しやすくなることであると、同セクションは述べています。こちらの方が本来の意味に近いかも知れませんね。長い回復の道も、今日がなければありません。
“May Your Recovery Be Long”
私の好きなスローガンの一つです。
