「早くも1954年から、アラノンのメンバーたちは性とアルコホリズムについて書かれた本を求めていた」
本書、Intimacy in Alcoholic Relationships の序文はこう始まります。1955年にはそのリクエストに応え、アラノン初の書籍である The Al-Anon Family Groups に『The Sex Problem』というタイトルの章が加えられるも、それは数頁にも満たないものであったようです。本書が出版されたのは2018年ですから、それから実に63年の月日が経ったことになります。
当時はアルコホーリクの妻たちが中心であったアラノンは大きく発展し、共同体を構成するメンバーは多様化しました。アラノンの成長と共に、性というテーマに含まれる内容もその角度も変容したことでしょう。
要望に反してなかなか書籍化されなかった要因として、アラノンの Conference Approved Literature の独自性が挙げられています。アラノンの書籍はアラノンのメンバーによって書かれるものです。つまり読みたい人の数に対して、話す人の数が少ない。性の問題というのは、非常に話しにくいことなのであります。
本書のタイトルにある intimacy は、「親密さ」と訳されることが多いです。最近では、インティマシー・コーディネーターという職種を通して耳にするようにもなりました。
ケンブリッジ英英辞典によれば、intimacy は「a situation in which you have a close friendship or sexual relationship with someone(誰かと親しい友人関係や性的関係にある状況)」を意味します。
(ふうん、なるほど)という感じですね。ブリタニカ百科事典はさらに踏み込んだ定義を載せています。
「Intimacy, the state of being intimate, which is marked by the consensual sharing of deeply personal information. It has cognitive, affective, and behavioral components. Intimates reveal themselves to one another, care deeply about one another, and are comfortable in close proximity.
(親密さとは、親密な状態であり、極めて個人的な情報を同意の上で共有していることを特徴とする。認知的、情動的、行動的な要素を持つ。親密な間柄にある人々は、お互いのことを曝け出し、お互いを深く思いやり、親しい距離感に心地よさを感じる。)」
今度は読んだ途端に、私の人生のある部分がはっきりと浮かび上がりました。intimacy は、私に深い関わりがあるものです。とりわけ「そこに問題がある」という点において。
さらに、タイトルの別要素である alcoholic relationships の「alcoholic」は、形容詞として使われています。
主に「containing or relating to alcohol(アルコール入りの、またはアルコール性の)」といった意味で使われますが、「affected with alcoholism(アルコホリズムの影響を受けている)」という意味もあり、タイトルは後者になります。
つまり alcoholic relationships とは、対アルコホーリクとの関係性に限らず(それが重大であるのはもちろんのこと)アラノンの人間関係すべてを指すものです。
2011年のアラノン世界サービス会議において、この alcoholic relationships における(性も含むがそれに限定されない)あらゆる intimacy に関する本を出版するという企画が発表されました。十分な数の投稿が寄せられるだろうか・・・というコミティの懸念とは裏腹に、最終的には1,300通を超す体験が集まったそうです。
intimacy という領域において、アルコホリズムは私たちの考え方や在り方にどのような影響を与えたのか。それらを変える上で、アラノンの霊的な原理はどのように役立ったのか。
一人で読むのももちろん良いですが、少人数のグループで読むとなお良いかと思います。
興味がある方のために目次の一部を引用します。それぞれの章はテーマに沿ったイントロダクション、メンバーの経験、考察のための質問事項からなっています。
Preface
Intimacy in Alcoholic Relationships (2018)
Chapter One: Alcoholism and Intimacy
Chapter Two: Building and Rebuilding Trust
Chapter Three: Communicating Clearly
Chapter Four: Negotiating Boundaries
Chapter Five: Spiritual Solutions
Chapter Six: Expressing Gratitude
Epilogue
全144ページ、13ドル。電子書籍版もあります。
紙書籍を日本から注文する際は、カタログの注文書をメールに添付して送る必要があります(オンラインブックストアは一部の国のみ対象)。送料は一律で本の値段の50%となります。
