『スタディ・ジャーナル』2025年10月号

a couple of dandelions

9月のスタディでは、様々な形の「コントロール」について考えました。
それは、相手を変えようと試みる操作的かつ防御的な態度だけでなく、自分を変えるための完璧主義や補償行為などの努力、現実に背を向ける否認として表れることもあります。

「強迫観念」「不安」「怒り」「罪の意識」「否認」はアラノンが定めるアルコホリズムの5つの影響ですが、その中でも「否認」はもっとも自覚しにくいものではないでしょうか。その理由は、まさに「現実が見えない」という否認の性質によるところが大きいのかも知れません。

How Al-Anon Works の連載記事『アラノンの否認(denial)』の方も良ければご覧ください。

ちょうど新しく取り組む質問も否認に関するものであったので、今回は「私たちの回復を阻む否認」をテーマにスタディを進めました。

ブリタニカ百科事典によれば、「否認」は悲しみや苦痛などが真実であること、あるいは現実であることを認めようとしない状態を指します。
また、現実を否認することで個人は耐え難い思考、感情、あるいは出来事から逃れることができる、とも書かれています。

スタディで否認について話し合うのは今回が初めてであり、この質問自体も少々分かりにくいため、質問はとりあえず脇に置いて、まず私たちにとって否認とは一体何であるのかを考えることにしました。

否認の定義と働き、表れ方のパターンを一通り確認した後、それぞれが否認にまつわる自身の体験を分かち合いました。

何をどんな風に否認していたか?
いつ、どのように否認は始まったのか?
否認をしていることに気がついていたか?
気がついていなかった場合、どうやって気がついたのか?

個々の経験は当然違うものの、幾つかの共通点が見受けられました。

分かち合った人の多くが「自分に向けられた誰かの発言」について言及したことに興味を引かれます。

それは、第三者の無遠慮な意見であったり、スポンサーからのストレートな指摘であったり、他の仲間の正直な分かち合いであったりとさまざまでした。
けれど、私たちがそうした外部からの刺激に動揺し、強い抵抗や嫌悪感を抱いたこと、それが私たちに大きな印象を残したことは共通しています。さらにその時点では、その感覚と自分の否認がまったく結びつかなったことも。

いつだって核心だけがベールに包まれている。
そして核心に近づけば近づくほど、地雷探知機が大きな音を発するように私たちの心は乱れます。

現実に直面することが回復の要件である以上、私たちが否認に守られている間はなかなか回復することができません。しかし一方で、アルコホリズムの進行とともに日常化した否認を無理やり解くことはできない。それもまた現実なのです。

それでも、根気よく一つ一つ現実に向き合う過程の中で少しずつ靄が晴れ、隠されているものが明らかになっていきます。
それは本当の感情であり、その背後には恥の感覚、アルコホリズムの影響である不安や怒り、罪の意識があるでしょう。

多くの場合、私たちは真実が見えてきて初めて、自分が何をどのように否認していたのかを知るようです。そしてかつては自分を傷つけた「誰かの不用意な言葉」に感謝の念を抱くようになることも、分かち合いから窺い知ることができた確かな共通点でした。

というわけで・・・今月はひたすら「否認」を語る回となりました。

来月は新しいストーリーと質問に入ります。
「無力を知ることと無力を受け入れることの違い」「他の人の行動に対して自分が無力であることをどのように判断するか」などなど、ステップ1の日々の実践に関する話もできそうですね。

それでは、11月2日(日)20時にいつものお部屋でお待ちしています。

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アラノンの第三ステップ(5)限界の向こう側』の中で少し触れましたが、この8月、私は飼っているオカメインコを外に逃がしてしまいました。

手許の『オカメインコとともに』という本には、「逃げたオカメインコを待っているのは、死」と書かれています。
また「防ぐためには、『逃がすことは殺すことにほかならない』という飼い主の強い自覚が必要」であり、「世の中に『絶対』はありません」とも。
だからこそ、思い込みと油断を排除して用心の上に用心を重ねなければならない。

自分がもたらした現実とその現実をもたらした自分を目の前にして、私は奇妙な無感覚に陥りました。そうなると何も感じません。

受け入れがたい現実と私自身から逃れようとする時に起こる否認。それを再び思い知らされる出来事でした。

参考文献
The Britannica Dictionary.https://www.britannica.com/dictionary/denial,(参照 2025-10-04).
細川博昭.オカメインコとともに.株式会社グラフィック社,2022,p.155.