アラノンのスローガン(7)“Progress Not Perfection” / “Just for Today” / “Together We Can Make It” / “Let It Begin with Me”

a group of birds standing on top of a lush green field

“Progress Not Perfection”

AAの書籍に記されているフレーズであり、アラノンのミーティングでもよく耳にするスローガン。なので、How Al-Anon Works で取り上げられていないのが少し意外でもあります。

自分の考え方・生き方が周りの人たちや自分自身を苦しめるのであれば、それを知った私たちが「早く変わりたい」と願うのは当然のことです。そのためのプログラムであるわけですが、12のステップに身構え、懸命に取り組んでもなかなか変わらない自分の現実に失望してしまうこともしばしば。そんな私たちを時に諭し、時に励ましてくれるのが、このスローガンです。
アラノンは「ジェントルなプログラム」であると言われています。これも色々な解釈ができそうですが、「穏やか」である分、アラノンの回復には時間がかかります。この終わりのない道のりを歩き続けるため、見えるはずのない「完成」ではなく、足元の小さな「成長」に目を留めることが大切であるのは、アラノンに長く来続けているメンバーたちの経験からも窺い知ることができます。

“Just for Today”

その道のりを作るのは、プログラムを意識して生きる「今日」の積み重ね。

英語版『ニューカマー・パケット』は、新しいメンバーのためのパンフレットが集められた冊子(通常無料で提供される)であり、『JUST FOR TODAY』と『スポンサーシップ』の二枚の栞がついています。
栞に綴られている「Just for today I will …(今日一日だけ、私は・・・)」で始まる決意のような複数の文言は、アラノンのウェブサイトに載っている説明書きによると、「日々を特別にするためのアラノンのアイディア、今にフォーカスするためのリマインダー」とのこと。
しかし、栞に選抜されるほどのスローガンながら、“Just for Today” はメンバーたちの間で余り使われていないような気がしています。“One Day at a Time” と意味が被っているからでしょうかね。ONE DAY AT A TIME IN AL-ANON が『アラノンで今日一日』と訳されているのも紛らわしいところ。

“Together We Can Make It”

少し前に書いた『アラノンの関係性』というシリーズ記事の中で、ロイスと親友エリーゼとの間に起こったエピソードをいくつか紹介しました。エリーゼはロイスだけでなく、彼女の結婚相手であるフランクを通して、ビルにも大きな影響を与えた人物です。
しかしながら、ビルのアルコホリズムによって、ビルとフランクはさることながら、ロイスとエリーゼも大きなわだかまりを抱えたまま疎遠になってしまいます。エリーゼの父親は、飲酒の問題を抱えていました。エリーゼにしてみれば、父と親友がアルコールに奪われたようなものでしょう。
その後、20年の時を経て二人は再会します。そこでアラノンの存在を知ったエリーゼは、「子どもの頃にそういう場所があったなら・・・」と仄めかしました。10代の子どものためのグループ、Alateen が発足されたのは、それから数年後のこと。

“Together We Can Make It” は、Alateen で使われているスローガンです。様々な保護の観点から、Alateenミーティングのオンライン化は長らく見合わせられていました。それがようやく、アラノンのモバイルアプリ経由という制限のもと、13歳~18歳の若者が Alateen のオンラインミーティングに参加できるようになりました。現在運営されているのは英語のミーティングだけであり、内情を知ることはできないながら、今後多言語に発展していくことを切に願います。

https://al-anon.org/newcomers/teen-corner-alateen/alateen-electronic-meeting

https://al-anon.org/blog/together-can-make

“Let It Begin with Me”

私が初めてアラノンの扉を叩いたのは、16年前のことです。飲んでいる夫に自分の苦しみを知らしめたい。アラノンに行くという行為はその一環、つまり単なる見せつけでした。そうした不純な動機で行き始めたアラノンで、私は初めて自分と同じ問題を抱えた人々に出会いました。しかしそこで私が見たのは、アラノンが謳う「希望」ではなく、「絶望」でした。
私は長らく、そのことをその時のグループのせいにしていました。人の入れ替わりが激しくてグループが弱かったから、スポンサーがいる人もスポンサーをやっている人もいなかったから、と。けれど、あの時の絶望は正しかったのです。「夫を動かしたい」という私の夢に対する希望など一ミリもないのですから。

アラノンを訪れる人たちは、少なからず似たような経験をするのではないでしょうか。私は一度この絶望から逃げました。しかし、アラノンの本当の希望があるのは、まさにこの絶望の先なのです。

「私から始める」ということは別の意味で私たちを圧倒するけれど、それを「どのようにやるのか」については、How Al-Anon Works の連載でこれまで見てきた通り。一人でやる必要も、いっぺんにやる必要も、完璧にやる必要もありません。

スローガンの章はこれで終わりとなります。次回、第10章『変えられた態度』に移ります。