アラノンのスローガン(4)“Easy Does It” / “Keep Coming Back”

Monochrome image of an empty bus stop with bird shadows on the wall.

“Easy Does It”

私の父の姓は「い」で始まり、名は「じ」で終わります。まだヨチヨチ歩きだった甥っ子が言う「じーじ」が「いーじ」に聞こえ、それが可愛らしいのと、実際の名前に対応していることもあり、いつしか皆が父を「イージー」と呼ぶようになりました。父の新たなニックネームを聞き、妙に関心したことを覚えています。それがまさに彼の風体をよく表していたからです。
父といる時の私は、いつも緊張していました。それは「飲んでは面倒を起こすから」に他ならないわけですが、そうでない時でも、私は父を厳しく見張るような態度を崩すことができなかった。本当は父の気楽さやユーモアが好きだったのに、私の緊張がそれを拒絶するような感覚がありました。そしてこの感覚は、夫に対するものともよく似ています。

溌剌と私たちの行動を促すスローガンが多い中、“Easy Does It” は異色でありながら、実にアラノン的であるとも言えます。ハードにならざるを得なかったアラノンにとって、その硬直を緩めるのは簡単なことではありません。
アラノンに来てからの変化としてメンバーが挙げる性質は、ほとんどが能動的なものであると思う。けれど「肩の力が抜けてリラックスしている状態」もまた、私たちに起こる喜ばしい変化の一つであります。

“Keep Coming Back”

How Al-Anon Works の第9章には載っていないものの、ミーティングの内外においてメンバーが互いに掛け合う有名なスローガン。
これまで取り上げてきたものに限って言えば、スローガンは私たちの在り方の対義語みたいなところがありますね。そうすると、アラノンに留まり続けるのは難しい・・・ということか。

アラノンメンバーの人種・年齢・性別・アルコホーリクとの関係性を特定し、アルコホーリクがメンバーの人生に与えた影響とメンバーの生活の質に対するアラノンプログラムの影響を測るため、WSOは3年ごとにメンバーシップ・サーベイを実施しています1。対象になったメンバーの出身国はアメリカとカナダだけで95パーセント超えという、かなり偏った統計ではありますが、それでも現在のアラノンを構成しているメンバーの背景や活動状況がグラフ化されるというのは大きな価値があると思う。
ここで注目したいのは、「アラノンの有効性」について。「1年以内にメンタルヘルスが改善した」と答えた人は全体の80パーセント、「4年以上の活動でメンタルヘルスが改善した」となると91パーセントまで上がり、そのうち5人に3人が「大幅な改善」と回答しています。かなり高いように思えるけれど、気になるのは、対象メンバーの97パーセントが少なくとも週に一度はミーティングに参加しているという点。つまり対象となっているのは、定期的にミーティングに参加しているメンバーなのです。

それでは、ニューカマーが共同体に留まる割合はどれ位なのでしょうか。サーベイでは扱われていないものの、このことを調査した報告書が ScienceDirect というプラットフォームで(要約のみ)公開されています2。勝手に関連付けられるようなものではないので参考まで。しかし私の地域的に限定された活動における体感では、さらにもっと少ないように感じています。私も17年前、半年も経たないうちにミーティングに行かなくなってしまった過去があります。再びアラノンを訪れるまでに12年かかりました。
アルコホリズムという複雑な家族の病、自分が受けた影響と抱える問題、そのために必要な解決。回復とは時間と経験を要する長いプロセスであり、来続けることはそれを繋ぐ重要な要素ですね。

“It’s Always Too Soon to Give Up”
別角度からのスローガン。

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“Keep Coming Back” は使わない、夫はそう断言します。その代わり、“Stay” と言うのだとか。AAを去った先で見た現実、戻ることの難しさを知った経験が、この自前のスローガンを言わせるかもしれません。

  1. 2024-Me2024-Membership-Survey.pdf ↩︎
  2. “Newcomers to Al-Anon family groups: Who stays and who drops out?”. ScienceDirect. https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0306460314000574 ↩︎