アラノンの第九ステップ(2)鎖の解錠

silhouette of bird on top of building

ステップ9:その人達、または他の人々を傷付けない限り、機会あるたびに直接埋め合わせをした。

STEP NINE: Made direct amends to such people wherever possible, except when to do so would injure them or others.

それでは、我々のステップ9を仕切り直ししましょう。

日本語では原文の主節と従属節の位置がバラバラになっていますが、ここでは主節「その人達に埋め合わせをする」の方から考えていきます。

その人達とは私たちが傷つけた相手であり、埋め合わせの意味は「傷つけた、または憤慨させたことに対して申し訳なく思っていることを示すために、特に相手のために状況を改善させる何かをすること」でありました。

人は生きている限り、図らずも誰かを傷つけ、怒らせてしまうことがあります。また、起こってしまったことは変えられません。
その時、人はどうするでしょうか。その方法は万国共通、昔も今も変わらないはず。娘が幼い頃、子どもたちが遊びを通してそれを学ぶ光景を何度も目にしました。そう、謝りますよね。「ごめんなさい」って。

私は自分の非を認めることができない人間でした。常に正しくなければならず、周りからの批判にも自分の間違いにも耐えられなかった。
社会生活の中で表面的な謝罪をする機会はあっても、それは単に自分の身を守るための建前。相手のためを思って謝るということを、私は40代半ばにして学び直さなければなりませんでした。

パートナー、親、子ども等のいわゆる家族は、私たちの「傷つけた人の表」に載る確率がもっとも高い人たちであると言えます。さらにその人たちがアルコホーリク本人であるか、あるいはアルコホリズムの影響を受けている人たちである可能性もかなり高いでしょう。

アラノンに来た時の私が一番強く恨んでいたのは母と夫であり、特に母の言動を批判的に分析しては苦々しく反芻する毎日を過ごしていました。
ステップ4で自分だけの棚卸しをすると聞いて、「そんなの成立するわけがない」と思ったのを覚えています。当然相手にも悪いところがあるのだから、それを脇に置いたまま自分だけ態度をあらためるなんてフェアじゃない、と。

こういう時、少しだけ腹立たしくもやっぱり助けられるのは、先行くメンバーたちの経験でした。大抵みんなニコニコしながらとにかくやってみるようにと言います。
結果は確かにとにかくやってみてわかった通り、私の懸念は全く心配には及ばない只の屁理屈でありました。
棚卸しでは自分を傷つけた相手の行いも認識し、その上で自分側の事実に目を向けます。相手側の一切合切を棚上げした時点で私たちは配慮はするも、依存はしないことになります。もしも相手が足並みを合わせるのを待っていたならば、私は金輪際変わらぬままその後の人生を終えていたことでしょう。

とにかくやってみないと始まらない埋め合わせにおいては、通常すぐにできそうな人からスタートするようにと勧められます。
誰がその人物に当たるのかは人それぞれであると思う。当時の私の目には、自分の家族が(物理的には)すぐにできるとしても、(感情的には)とてもできそうにない人たちに映った。けれど今は少し違う見方をしています。
親は本来子どもの幸せを望んでいるし(逆も然り)、アルコホーリクは(ここまで来ている家庭であれば大体)埋め合わせが何であるのか知っている。これらの事実は、ステップ9を行おうとする私たちの味方になってくれるはずだと考えています。

それからもう一つ勧められたもの。それは自分が相手に対して何について申し訳なく思っているのか、これからどうありたいと考えているのかを簡潔に記したメモです。これをポケットに忍ばせて臨むことと、前回の記事で書いた最後の質問をすることは夫に倣って実行し、大きな助けになりました。

ところで・・・前回から読んで下さってお気付きの方もいらっしゃるかと思います。
私がアラノンに来た時、夫はすでにソーバーでした。夫から埋め合わせをされて「過去を水に流さなければならない」と考え、提案されたフリーのオプションまで丁重に断った私は、それにもかかわらずその後も夫を恨み続けていたことになります。
それじゃあ埋め合わせをしても恨まれ続けるのか、と思われるかも知れません。
確かに私の場合はそうでした。でもそれは、私自身の選択でした。夫は自分ができる限りの責任を果たし、その時点で互いの鎖は解き放たれていたからです。
埋め合わせをする側がその後の相手の選択までコントロールすることはできません。
そうしてそのうちに私には恨まないという選択もできないことに気がつき、それがアラノンに行き着くきっかけとなりました。

話が少し前後してしまいますが、恨みに関しては自分側の事実に目を向けることと神の助けが不可欠であり、それはまたステップ10に入ったところで考えたいと思います。
その前に次回、ステップ9の諸々の条件「直接」「傷付けない限り」「機会ある度に」に目を向けてみましょう。

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当然のことながら、飲んでいるアルコホーリクに埋め合わせをすることになるアラノンメンバーもいます。
現在私が親しくしている日本人の仲間もそんな経験を持つ一人。ここに詳しく記すことはできないけれど、その時の彼女の話には聞く度に心を揺さぶられます。