前回の記事『エッセイからの考察①子どもの立場から見たアルコホリズム』の冒頭で、私は以下のように書きました。
「私たち家族もまた、長年あれだけ父の飲酒に悩みながら、とうとう最後まで父とアルコール依存症を結びつけることはありませんでした。これは今の私にとって、自分のことながら非常に理解に苦しむことであります。」
「舌の根の乾かぬうちに」とは正にこのことでありますが、この言葉は私がいかにアルコホリズムの本質を理解していないかを表しています。アラノンの基本テキストであるHow Al-Anon Worksの序文には「他の誰かのアルコホリズムの影響というのは時にsubtleであり、それにもかかわらずdevastating(壊滅的)である」と書かれています。ビッグブックの中にも、アルコールやアルコホリズムの狂気がsubtleであると形容する箇所があります。メリアム=ウェブスターのオンライン辞書でsubtleを調べると、次のような意味や定義が出てきます。
・delicate(繊細な)
・elusive(うまく逃げる)
・difficult to understand or perceive(理解し難い、気づきにくい)
・clever and indirect, disguised in purpose(巧み、間接的、偽装目的)
・having or involving keen perception or insight(鋭敏な知覚力や洞察力を持つこと)
・highly skillful, expert(非常に熟練した、エキスパート)
・cunningly made or contrived, ingenious(巧妙に作られた、工夫に富んでいる)
・artful, crafty(狡猾な、ずる賢い)
・operating insidiously(知らない間に作用している)
一つの単語にたくさんの意味がありますが、そのどれもが良くも悪くもアルコホリズムを非常にうまく形容していることに驚かされます。私は周りの人々や状況をコントロールすべく、物事や自分自身を巧みに偽装するようになりました。自分の目的を遂行するためには手段を選ばず、不都合な真実は狡猾に隠蔽するエキスパート。ただでさえ理解し難く、気づきにくいこの病の前に立ちはだかっていたのは、他でもないsubtleな性質を身につけた私自身だったのです。