アラノンの第二ステップ(2)アラノンの中のAC

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現在『心の家路』では、さまざまな共同体の12ステップのスタディが連載されています。『12ステップのスタディ (31) 情報整理 2 ACと共依存』はアラノンにも直接的な関連があり、私たちの解決を考えるに当たって重要な事柄を含んでいます。というわけで、ステップ2の文言に入る前に「アラノンの中のAC」というトピックを挟み、そこから家族の解決につなげたいと思います。また、当記事の中で私のnoteを紹介していただきました。これからも役立つ情報を発信していけるよう尽力します。引き続きどうぞよろしくお願いします。

私の限られた経験の中の話にはなりますが、アラノンのアルコホーリクに対する関係性は、配偶者(特に妻)が非常に多いです。子であるメンバーの割合は2割を超える程度かと感じますが、その多くは私と同様に自身もアルコホーリク(または別のアディクト)と結婚している、あるいは結婚していた人たちです。親であるメンバーが極端に少ないことにも注目すべきです。さらに配偶者や親の立場のメンバー中にも、自分の親はアルコホーリクではないものの何らかの問題があり、自身がACであると自認している人の数は少なくありません。潜在的なメンバーも含め、ACはアラノンにとって大きなテーマであります。

私がプログラムにつながった頃、日本ではアラノンのスポンサーが見つかりにくい状況にありました。そのため、私はGAの仲間にスポンサーシップを申し込み、AAのビッグブックを使ってステップワークに取り組みました。当時のアラノンとのつながりは、週一回の英語のミーティングと、ワークショップのYouTube動画※のみ。ステップワークが終わる頃、アメリカ在住の日本人メンバーたちが日本語のオンラインミーティングを立ち上げました。アラノンプログラムを実践している日本人の仲間とつながることは、私にとって非常に大きなことでした。

かくして私の回復のプロセスは始まりました。もし初めからアラノンのスポンサーに出会っていたとしたら、恐らくビッグブックを使っての12ステップはやらなかっただろうと思います。

さて、当記事に書かれている通り、AAのテキストはこう説きます。私たちの極端な自己中心性は酒を止めても相も変わらず問題を引き起こし、ひいては自分自身を苦しめている。だから12ステップによって「変わる」必要があるのだと。特に棚卸しによって、この姿は浮き彫りにされます。私の自己中心性は否でも応でも紙に書き出され、自分もまた「ショー全体を取り仕切りたがる役者」であるのを自他ともに認識します。けれど・・・ここにある落とし穴があったのです。

当記事によると、ACには二つの特徴があります。一つ目は、自己中心的なアルコホーリクと、酒は飲まないにしても似たような特性を持つその配偶者に育てられ、両親と同じ自己中心性を身につけたこと。もちろん、子どもは喜んで自己中心的になるわけではありません。多くは家族の誰か、また自分自身を守るために選ばざるを得なかった手段であり、本来なら親の庇護にあるはずの子どもはその過程でたくさんの傷を負います。この「感情的な傷を負っている」ということが、ACの二つ目の特徴であるとされています。

AAのテキストを使い、私の自己中心性が周りの人々と私自身を苦しめるという構図にフォーカスすることは、私が感情的な傷を負っているという側面を覆い隠す効果がありました。誰かを傷つけたことを認めるよりも、誰かに傷つけられたことを認める方が難しいのです。私は半ば張り切ってステップを進めるも、張り切るのはそうすることで自分の傷や恥の部分に目を向けずに済むからだということには気がつきません。私の二つ目の特徴はもっと後になって、アラノンの仲間との交流の中で抵抗や安堵を繰り返しながら、少しずつ明らかになってくるものでした。

一方で、アラノンのテキストを使ってスポンサーシップをやるうちに、家族側の自己中心性はほとんどのスポンシーにピンと来ないことが分かりました。どうやらアラノンのテキストはビッグブックと違い、どちらかと言えば二つ目の特徴を明らかにするアプローチのようです。これは何とももどかしいジレンマであります。自分の自己中心性が自らを苦しめていることが分からなければ人は変わりたいと思わないし、自分で自分を変えられないことに気がつかなければ解決を求めないからです。

解決を求めて、共同体から共同体へ移動する人たちがいます。けれど、どの共同体においても解決は同じです。私たちが探すべきものは、自分にぴったりの解決ではなく、自分のステップ1の真実です。もっとも有名なアラノンメンバーと言えば、AAの共同創始者であるビル・Wの妻、ロイスであるでしょう。How Al-Anon Worksには『ロイスの物語』が収録されています。ごく短いものですが、その中で彼女は淡々と語ります。「結婚以来、私がビルのためにどれだけ努力してもうまくいかなかったことを、ただの友人、しかもアルコホーリクが短期間でやってのけてしまった。その事実に、私のプライドは傷つけられた」と。一躍時の人となった夫の影で自己憐憫に浸っていた自分に気がつき、同じステップをやる決心をします。私にとってのステップ1は、私の人生は親と同じ(実際は私たちの方が落ちぶれていましたが)であったことです。結果的には、真実を見つけるために、私はAAとアラノンの両方のテキスト、そしてアラノンの仲間たちを必要としました。

最後にもう一つ。冒頭で、親の立場のメンバーが少ないことに触れました。夫の父、つまり私の義父はアルコホーリクでしたが、彼がソーバーになると義母もアラノンにつながり、彼女は84歳で亡くなるまでの実に40年間、アラノンのメンバーであり続けました。夫の二人の妹もアルコホーリクであり、次女はソーバーになるも、長女はアルコホリズムが原因で亡くなりました。こと娘たちに関しては、義母は最後の最後まで苦しみました。親としてのステップ1は、それほどに重いものであるのだと想像します。

※AliceというアラノンメンバーがAAのビッグブックを使って12ステップに取り組むワークショップ。彼女もまたビッグブックから解決を見い出した一人です。
https://www.youtube.com/watch?v=N-E61Y3Mrws