【言の葉いろいろ】濡れた毛布

paper boat on body of water

How Al-Anon Worksに沿って書いている記事がステップ2まで来たところで、筆が止まっております。今、私自身がステップ2のところにいるので、当然と言えば当然かも知れません。そこで、How Al-Anon Worksの連載と私自身のステップワークの足並みを揃えることにしました。今後はどうしてもペースがスローダウンするため、其の分こうして雑記やアラノンの書籍の紹介などを書いていこうと思っています。

今からちょうど半年前、茨城県の牛久で開催された「ビッグブック・スタディ “Big Book Comes Alive!”」に参加しました。それ以来、そこで一緒になった(プラス、後から加わった)様々な共同体の女性メンバーで、月に二回ほど勉強会を行っています。ここのところは、女性の「回復の物語」を題材にして学んでおり、前回はAn Alcoholic’s Wifeを読みました。『アルコホーリクの妻』というタイトル名の通り、AAで回復したある男の妻(彼女はアルコホーリクではない)の視点から書かれた物語です。An Alcoholic’s Wifeはビッグブックの第一版(1939)にしか掲載されなかったそうで、邦訳も出ておらず、私もその存在を知りませんでした。1951年にアラノンが創立される12年も前に出版された家族の回復の物語。なんとも貴重、かつ興味深いものであります。

この物語は非常に簡潔でごく短いものです。夫と土曜の夜のパーティに繰り出すようになるも、ほとんど酒を飲まない私はすぐにwet blanketになった、と描写する場面があります。wet blanketとは文字通り「濡れた毛布」ですが、比喩的に「a person who spoils other people’s fun by failing to join in with or by disapproving of their activities(他の人々の活動に参加しなかったり、その活動を非難したりすることによって、人々の楽しみを台無しにする人)」を意味します。日本語では「水を差す」という表現に近いかと思いますが、その語源が「湯に水をそそいで温度を調整する行為」であるのに対し、wet blanketの語源は「湿った布で火を消したり、濡れた服を着なければならないという考え」から来ています。「濡れた毛布」の方が遥かに強力ですね。

しかし、このwet blanketほどアラノンの異名と呼ぶにふさわしい言葉はないんじゃないかしら・・・と思う。アクティブ・アルコホリズムの中にいれば当然の消防であるけれど、ソーバー13年(今日は夫のAAバースディでした)となる今も、場を白けさせる私の役割は健在であります。夫や娘から湧き出る喜びやアイディアに同調できず、口には出さずとも心の中で打ち消してしまうのです。

ちなみに、AAの基本テキストにも第八章「妻たちへ」の中で二回ほどwet blanketが登場しますが、日本語版では一つ目は訳出されておらず、二つ目は「ケチをつける」と訳されています。やはり物足りない気がしますね。こういった文化的な背景を含むイディオムは訳しずらいのでしょう。けれど当事者である私たちには、自分が「濡れた毛布」である感覚が痛いほどにわかるわけです。An Alcoholic’s Wifeは、こう始まります。「不運なことに、あるいは幸運なことにと言うべきか、私はアルコホーリクの妻である。不運である理由は飲酒が苦悩と悲しみをもたらしたことであり、幸運である理由は私たちが新しい生き方を見つけたことである(拙訳)」と。こうして体験から言葉がわかるようになることも、小さからぬ幸せです。